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KurzweilがPC4-7を発表!

Kurzweil社が「PC4-7」を発表しました。
同社フラッグシップシンセの最新モデル「PC4」の弟分です。

旧「PC3」シリーズと比較して「PC4」はだいぶん手に入れやすい価格に設定されていましたが、今回はその76鍵セミウェイト仕様。至極のKurzweilサウンドが、よりいっそう身近になりそうです。

Kurzweil PC4 Demo with Jim Alfredson

日本ではほんとにマイナーなシンセサイザーメイカーになってしまった感のあるKurzweil社ですが、その歴史は’80年代にまで遡ります。創業者はいまでもAIの話題なんかでよくお名前を見かけるレイ・カーツウェイル氏です。

Kurzweilシンセについて

同社が1984年(「DX7」がデビューした翌年)にリリースしたのが、プレイバックサンプラーの先駆け「K250」でした。

Kurzweil K250 demo

いまでこそ当たり前の感があるPCMシンセサイザー(サンプルプレイヤー)ですが、当時「そのまんま本物のピアノの音がする!」というROMベースの楽器は衝撃以外のなにものでもありませんでした。しかも音色はサウンドブロックで拡張できる仕様。音も見た目も最高です!

その分お値段もお高めで、当時の日本円で300万円くらいしたはず。

で、その「K250」をカスタムチップによるスリム化で徹底的にコストダウンを図ったのが「K1000」シリーズ、そこからシンセサイズアルゴリズムをユーザーに開放してフィルター等のDSPファンクションを強化したのが「K2000」シリーズ、さらに「K2000」のボイス数を拡張して機能強化した「K2500」シリーズ、エフェクトを強化し、3ボイス分のDSPモジュールを連結して使えるトリプルストライクモードが搭載された「K2600」シリーズ、同社のステージキーボード「PC」シリーズと融合し、Kシリーズのシンセサイズ機能を受け継いで進化した「PC3」シリーズと、カーツウェイルサウンドの系譜は継承されていきました。

ちなみに「K2000」以降はマルチディンバーで、シーケンサーを搭載したワークステーションスタイルになっています。音源方式はV.A.S.T(Variable Architecture Synthsis Technology)」、「PC3」からは進化型の「Dynamic V.A.S.T」と呼ばれています。

V.A.S.Tについて

この「V.A.S.T」がすごく面白くて、あらかじめ並べられたブロックにユーザーがDSPファンクションをアサインして音づくりする方式です、つまりシンセサイザーのボイスアーキテクチャーそのものをユーザーが定義できるわけです。実はPCM音源の発音部分もDSPファンクションで、さらにDSPの波形モジュールを加えて音作りもできます。スペック上96オシレーターになっているのはそういう理由です。こういう自由度を持ったシンセサイザーは当時ほかになかったと思います。

KURZWEIL K2000 Analog sound presets NO TALKING Demo

そういえば「K」シリーズは、内部リソースの扱い方も独特でした。
たとえば音色のプリセットなどは普通のシンセだと「1000音色メモリー」なら、あらかじめ1000個のスロットが用意されていて、そこにデータを入れていく感じです。が、V.A.S.Tだと音色のナンバーはあくまで「ID」、消費されるのはメモリです。ROMの音色をエディットして保存するとき、同じ「ID」に上書きすれば、エディットした音色がその「ID」の音になります。ROM音色は消えたのではなく、上書きした音色(の「ID」)をデリートすればまた復活します。すごく合理的で、コンピューターっぽい考え方です。「DX7」とはまた違う意味で、使っていて「デジタルシンセサイザー」なのを意識します。

音について

「K」シリーズと「PC」シリーズでは若干、音色の傾向が異なっています。「K」シリーズの方がシンセらしく「重め」、「PC」シリーズの方が国産ワークステーション的な「明るめ」の音でしょうか。が、どちらもカーツウェイルらしいサウンドです。

で、搭載されているPCM音色データですが、「K」シリーズはもちろんのこと「PC」シリーズでもデフォルトでは「メガバイト」単位です。「ギガバイト」が当たり前な国産ワークステーション機に比べて見劣りしそうですが、音ではまったく負けていないのがすごいところ。実際「V.A.S.T」のシンセサイズ機能が強力で、サンプル容量のハンデはあまり感じさせません。

Kurzweil PC3K8 demo Orchestral Sounds part 2 – gra Jacek Skowroński (test E-MUZYK.pl)

なお「PC4」では「PC3」シリーズまでの資産も受け継ぎつつ、オプションだったピアノ音源なども採り込んで、晴れて「ギガバイトクラブ」の仲間入りです。

で、デザインについては……。

うーん、「PC4」についてはずいぶん妥協しちゃったな、というのが正直な感想です。シリコンのソフトボタンの多用は、どうしても安っぽく見えてしまいますね。まぁその分、コストダウンにはなっているのかもしれませんが。

個人的にはアクセル・ハートマン氏あたりがデザインしてくれた方が、見た目と出音のポテンシャルの釣り合いがとれそうな気もします。

PC4-7

さて、「PC4-7」です。

同社のシリーズは伝統的に、88鍵ピアノタッチ76鍵セミウェイト61鍵シンセ鍵盤の、3つのバリエーションで展開されてきました。今回はその「76鍵」版。お値段的にも、松竹梅の「竹」に相当します。

まだ国内価格は発表されていませんが、だいぶお求めやすい価格帯になるのではないかと期待できます。
日本ではやはり国産ワークステーションが強いですが、サウンドや機能ではぜんぜん負けてないので、これを機に、もうちょっとKurzweilの知名度も上がれば良いなと思います。

がんばれKurzweil!

あと「PC4-6」も早く!(「K3000」は……さすがにもうないか)