実はこれ、知らなかった……。
Wikipediaをクルーズしていて見つけたものです。リン・エレクトロニクス社って「Linn 9000」が最後のマシンだと思ってましたが、こういうのがあったんですね。
リン・エレクトロニクス社といえば、あの「Linn Drum」を開発したロジャー・リン氏が設立した会社です(いまさら説明するまでもないですが)。初代「LM-1」2代目「Linn Drum」と音楽史に名を残す銘器を送り出し、続く「Linn 9000」がバグバグだったり安価なドラムマシンが他社から続々と発売されてきたりなどの世の流れもあり、1986年に倒産とあいなりました。
1980年代といえばエレクトロニクス技術の進歩にともない、シンセサイザー業界もアナログからデジタルへ、ニッチな市場からよりマスなマーケットへと急速な変貌を遂げていった時代です。同時に波に乗れなかったメーカーの生き残りも厳しく、発売直近でお蔵入りになったり、発売してもほとんど市場に出回らなかった商品などもあります。このマシンも同様に、プロトタイプとしてつくられた一台のようですね。
初代「LM-1」の使い手としてはプリンスが有名です。
「LM-1」のサウンドはサンプリングの音ネタなどで、いまでは簡単に手に入ります。
が、普通にリズム組み上げてもこの雰囲気にならないのはDAの関係か、音処理が良いのか、ロジャー・リン氏のシャッフルのおかげか、単に当時のマシンスペックによる絶妙なヨレの問題か……。
とにかく銘器なのは間違いないですけど。
ちなみに「LM-1」はメモリー容量の関係で、クラッシュシンバルは入ってないです。
さて「LinnDrum Midistudio」ですが、スペックを見ると「Linn 9000」のラックマウントバージョンのような感じです。で、「Linn 9000」がドラムマシン然とした形状だったのに対し、こちらは4×4パッドを装備した現代のビートマシン風の見た目。
しかもこれ、パッドが左側にあります。
そう、ロジャー・リン氏が設計に関わった「MPC60」から「MPC3000」までのスタイルです。
で、次の「MPC2000」からMPCシリーズの設計はAKAI社の内製となり、パッドは右側に配置されます。
これについては何かのインタビューで読んだ記憶があるのですが(ごめんなさい、出典は忘れました)、実はロジャー・リン氏が「左利き」で、氏が左手でパッドを操作するためにあの位置になったのではないか?とのことでした。真偽はわかりません。
さて話がそれましたが、「LinnDrum Midistudio」についてです。
そういえば「Linn 9000」はMIDIシーケンサーにドラム音源をのせたようなつくりなので、中心には「MIDI」があったわけです。まさに「Midi Production Center」。その本体をラックに収納し、リアルタイム入力のシーケンサー部が強調されたのが「LinnDrum Midistudio」となるでしょうか。
で、その音源部をAKAI製のサンプラーにのせかえたのが……と考えると、「MPC60」から始まるビートマシンの系譜へと見事につながります。まさにミッシングリンクです。
とにかく、そんな流れで生まれた新たな「楽器」のスタイルが、現在でも受け継がれています。そして今後も新しい音楽を創っていくんだなと思うと、なんだか感慨深いものがありますね。
あ、そういえば「MPC Live」はパッドが左側なので、実は先祖帰り?