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KORG社がmodwaveを発表! ウェブテーブルシンセサイザーの新顔です

Image: via KORG Inc.

新世代のベクターエンジンを積んだ「wavestate」、FM音源をモダンに復活させた「opsix」に続いて、KORG社の37鍵シリーズにニューフェイスの登場です。音源にウェーブテーブル方式を採用、同社のDWシリーズのDNAも受け継いだ「modwave」になります。

これで80年代、アナログからデジタルへの過渡期に登場した3つの音源方式の揃い踏みですね。ロゴの「dw」だけ色違いなのもオシャレです。

DW-8000について

で、その始祖ともいえる「DW-8000」ですが、こんな感じ。

Korg DW-8000 demo

ウェーブテーブシンセというよりは、16のデジタル波形を持つデジタルオシレーターの後段にアナログフィルターを配して音づくりを行なうハイブリッドシンセサイザーになります。

搭音源方式は「D.W.G.S」。搭載しているのはデジタル波形ではありますが、同社「M1」以前の製品なので時代的にもバリバリPCMというわけではなく、シンプルな単サイクルのROM波形になります。本機のマニュアルによれば「実際の楽器音の波形を『倍音加算方式』によってシミュレートしたもの」とのことで、オシレーター自体はアディティブな発想のシンセです。で、従来の音づくりのワークフローは踏襲しつつもオシレーターのデジタル化により、当時のアナログシンセでは出せない音を追求した機種という感じだと思います。

実機の玉数もそれほど多くないようで、中古もヤフオクでたまに見かけるくらいです。ので、わりとレアなシンセになるんじゃないでしょうか。個人的にも、そういえば友人の誰かが持っていたような……レベルです。でも、なかなか良い音してますよね。アナログっぽい音もいけるし、チェロなんかもかなりリアルです。ただ、パラメーターの変化幅も最大で「0-31」と5bit解像度で粗めだし、やはりデジタルへの過渡期のシンセという印象ではあります。

modwaveはというと…

で、「modwave」です。

modwave – an edgy, expansive, and easy to use wavetable synthesizer

こちらは64波形を収納したウェーブテーブルを200以上装備と、いやそれもう「DWシリーズの資産をベースにとかいってるレベルじゃないでしょ」な進化になってます。そもそも「DW-8000」はウェーブは持っていてもテーブル化はされてないし「modwave」はデジアナでもなさそうだし……というわけで、これはもう別物シンセと考えてよさそうです。

では、スペックを見ていきます。

オシレーターは

まず、オシレーターです。

2基のウェーブテーブルオシレーターが同時使用可能で、さらにサブオシレーターとノイズジェレネーターも装備しています。

同社のシンセエンジンは伝統的にオシレーターをダブルにするとポリ数が半分になるような仕様が多いですが、本機ではきっちりオシレーター2基を標準装備。その上で32音ポリを確保しています。マルチティンバーでもないのにちょっと多いなぁと思うかもしれませんが、音色をレイヤーした状態での発音数の保証が前提でしょう。

ストラクチャーを見ても、パフォーマンスモードでの2音色レイヤーが確認できます。

Image: via KORG Inc.

さて、そのウェーブテーブルオシレーターですが、面白いのが「A/Bブレンド」。

ふたつのウェーブテーブルをリアルタイムにブレンドして、新しい波形がつくれるシステムのようです。で、オシレーターは2基ですから、同時に4つのウェーブテーブルをまな板の上に乗せて調理できるわけです。ウェーブテーブル自体も波形の再生ポイントを自在にモジュレーションできますし、オシレーター同士もFMやAMが可能です。4つのウェーブテーブルがうねりまくってひとつの音色を形づくる様を想像するに、たしかに「現代版モンスター・シンセ」という形容も納得です。

PCM波形も搭載

さらにオシレーターには、内蔵のPCM波形を再生する「SAMPLE」モードも用意されています。波形は同社「KRONOS」「KROME」からの移植に、新規も追加されています。「大容量サンプル」とのことなので、普通にPCMシンセとしても使えそうですね。その上で、ウェーブテーブルとレイヤーしたり、サンプル波形も変調できたりと、幅の広い使い方が想定できます。

なお、専用のサウンドエディターを使えばウェーブテーブル自体の拡張も可能なようです。

サンプル波形もユーザー独自に追加できるといいなぁ、というのが希望ですが、これはちょっと無理かな。ただ、まだ情報自体が少ないので、淡い期待を抱きつつ続報を待ちましょう。

フィルターについて

DW-8000は正真正銘のアナログフィルターでしたが、「modwave」のフィルターはヴァーチャルアナログだと思われます。おなじみ「MS-20」のBiteフィルターと、「Poly-6」フィルターのモデリング、ということはこちらは「SSM2044」ですね。ちなみに「Prophet 5 Rev.1&2」は「SSM2040」です。ほかにも複数のフィルターモードがブレンド可能な「マルチ・フィルター」も用意されているようです。ということで、搭載されているフィルターは全12種類。

なお、海外の文献を漁ったところ、DW-8000実機のフィルターには「NJM2069」というチップが使われていて、同社「Poly-800」と同じとのことでした。「modwave」では、さすがにこちらは未搭載でしょうか。

モジュレーションについて

名前が「modwave」なのもありますが、モジュレーション系はかなり力が入ってます。

4エンベロープ、5LFO、デュアル・モジュレーション・プロセッサー、2つのキートラック・ジェネレーターに加えて、強力なのがマルチレーンの「モーション・シーケンス2.0」。そしておもしろそうなのが「Kaoss Physics」です。

モーションシーケンス2.0

「モーションシーケンス2.0」は「wavestate」に搭載された「ウェーブ・シーケンシング 2.0」の進化版ですね。「wavestate」では文字通りウェーブの鳴らし方(フレーズ)をステップシーケンサーで制御して音をつくっていくような使い方でしたが、それをモジュレーションに特化させた感じでしょうか。ステップで制御される複数のレーンは、それぞれ独自にループポイントを持たせられるため、組み合わせることで複雑なモジュレーションシーケンスが作成可能となるようです。

Kaoss Physics

「Kaoss Physics」は、物理演算モデルのアルゴリズムをモジュレーションに適用するという発想のようです。

動画を見る限り、XYパッドを「箱」、操作を「ボール」に見立てているようですね。で、その中の動きにフィジックスを当てはめて、位置座標とベクトルをモジュレーション値に適用するといった感じでしょう。で、冠名の「Kaoss」からもわかるように、本体左上の「Kaoss Pad」でボールの動きにちょっかいが出せるという、いままでにない感覚のモジュレーション制御になります。

ランダムでもなく、完全オートでもなく、あくまで仮想物理ベースというのがおもしろいところ。ハプニング的な効果も期待できそうです。

コンセプトは新たな波形をつくり出すハイブリッドシンセサイザー

ということで、最初見たときは(ウェーブテーブルなら「wavestate」もあるし)あまりピンとこなかったんですが、スペックを掘り下げてみると実はこれ、かなり楽しいシンセじゃないでしょうか。

ほかにも、ここでは紹介し切れなかった機能もたくさんあるし、「wavestate」や「opsix」と同価格帯ならかなりお買い得というか、ちょっと欲しくなります。

ウェーブテーブル方式のコンセプト自体は古くから存在するものの、ソフトウェア音源ではNIの「Massive X」やArturiaの「Pigments」、ハードウェアではModal Erectronicsの「ARGON8」やBehringerの「BBG(こちらはクローンで続報待ち)」、ついでに本家Waldorfもいまだこだわってますし、最近なぜか活気づいている音源方式のひとつでもあります。

で、「modwave」ですが、「波形レベルから、いままでない音を鳴らすハイブリッドシンセサイザー 」というコンセプトは、たしかに同社DWシリーズの魂を受け継いでいるといえるかもしれません。それに加えて強力なモジュレーションと、チャレンジングな機能の搭載で、本機はかなり魅力的に思えます。

本年6月発売予定とのことなので、期待して待ちましょう!

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