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KV331 SynthMasterの音づくり(8)モジュレーションソースいろいろ:LFOを活用する

SynthMasterのモジュレーションソースモジュール

前回はモジュレーションソースの前編として、「SynthMaster」に用意されているエンベロープジェネレーターについて紹介しました。今回は後編です。モジュレーションソースのもうひとつの花形モジュールである「LFO」について見ていきたいと思います。

その前に、前回の復習を。

「SynthMaster」が装備するLFOもまた、エンベロープジェネレーターに負けず劣らず強力です。やはり他のシンセにはあまり見られない、さまざまな機能が装備されています。

Voice LFOとGlobal LFO

「SynthMaster」に用意されている「Voice LFO」と「Global LFO」は、機能的にはほとんど同じモジュールとなります。

「Voice LFO」はレイヤー毎に個別に用意されているLFO、「Global LFO」はレイヤー共用のLFOです。1レイヤーで音づくりする分にはそれほど意識する必要はないので、「Voice LFO」から消費していく感じでよいでしょうか。

ちなみに「Voice LFO」はレイヤー毎に2基、「Global LFO」は4基の同時使用が可能です。

SynthMasterのLFOモジュール

エンベロープと同様に「Bipoler」ボタンがあります。オンバイポーラー (値の変化が-1〜+1)、オフユニポーラー(値の変化が0〜1)に切り替え可能です。

また、波形の周期をホストのテンポに同期させる「Sync」もあります。
「Sync」では、エンベロープよりも細かなデュレーションが設定できます(三連符も可能ですね)。

SynthMasterのLFOをSyncモードに設定する

Free」ボタンをオンにすると、LFOがフリーランニングモードになります。キーオン毎にLFOの周期がリトリガーされず、アナログシンセっぽい挙動となります。「Global LFO」は逆で、「Retrig」ボタンがオンフリーランニングがオフになります。テンポに同期させる場合はリトリガーします。

ノイズをミックスする

「SynthMaster」のLFOは、「Sine(サイン波)」「Tri(三角波)」「Sqr(矩形波)」「Saw(ノコギリ波)」の4つの基本波形を持っていますが、それに加えて、ノイズをミックスすることができます。

LFO波形とノイズをミックスする

Volume」がLFOの出力、「Noise」がノイズの出力と、それぞれ独立したレベルを持っています。

たとえば「Volume」を「0」にして「Noise」のレベルを上げれば、LFOモジュールからはノイズだけが出力されます。つまり、モジュレーションソースにノイズが使えるわけです。

普通のシンセではノイズはたいてい波形選択式になっているので、ちょっとめずらしい仕様です。で、同様のミックス機能を持っているシンセをさがすと、メジャーなところでは「Prophet 5」の「ホイールモジュレーション」になります。

Prophet 5のホイールモジュレーション

軽くノイズを混ぜつつピッチやフィルターをモジュレーションしていくと、簡単に荒々しい音がつくれます。このへん、「SynthMaster」もやはり「Prophet 5」を意識したつくりになっているのではないかと思います。

LFOエンベロープ

たまにディレイを装備したLFOがありますよね。ディレイつきのLFOでは、キーオンから間を置いてモジュレーションが効き始めるような設定が可能です。

で、「SynthMaster」のLFOはさらに強力で、ディレイはもちろんですが、専用の「AR」エンベロープまで用意されています。

LFOが装備しているエンベロープジェネレーター

ディレイに加えて「Attack」タイムを調整すれば、一瞬間を置いてからLFOがじわじわと効いてくるような効果もつくれるわけです。

このような機能は、普通のシンセではマトリクスモジュレーションを使って実現するのが一般的です。しかもエンベロープジェネレターもひとつ消費します。こういう機能が当然のように実装されているあたりは、「SynthMaster」はやはり、よく考えて設計されているなぁと思います。

StepとGlide

LFOは音色に周期的な変化を与えることができますが、「Step」および「Glide」を使えば、そのモジュレーションをさらにリズミカルなフレーズ状にすることができます。

SynthMasterのLFOのStepモードの詳細解説

Steps」は最大32ステージまで設定でき、各ステージのレベルが調整が可能です。
Loop」は、ループのスタートポイントを指定できます。
Quantize」は、出力レベルの解像度です。このパラメーターを上げるとディスプレイにグリッドが表示され、ラインがスナップするようになります。

その他の基本的なパラメーターはLFOに準拠するため、ノイズARエンベロープも使用できます。
もちろん「Sync」をオンにすれば、ホストのテンポへの同期も可能です。

「Step」モードと「Glide」モードの違い

「Step」と「Glide」の大きな違いは、スロープの形状です。

「Step」はスロープの終端が、必ず「0」になります。

LFOのStepモードの波形表示

対する「Glide」は、スロープの終端が次のレベルの先端につながります。

LFOのGlideモードの波形表示

違いもディスプレイで一目瞭然です。波形をビジュアルで確認できるのは、わかりやすくてよいですよね。

Dual

Dual」は、ふたつのLFO波形をクロスフェードできるモードです。

LFOのDualモードの波形ミックス

xfade」がバランス、「Tone」はローパスフィルターアルゴリズムの「Hi Cut」に相当し、「Bits」は波形の解像度となります(「Bits」を下げるとカクカクなロービット波形になります)。

ちなみに基本波形のほかにも、シングルサイクルウェーブも使用可能です。ユーザーサンプルをアサインすることもできます。

LFOのDualモードではシングルサイクル波形も選択できる

波形をミックスして新しいLFO波形がつくれるだけでもかなり面白い機能ですが、「SynthMaster」ではさらにノイズまで加えることができます。

LFOのDualモードでもノイズをミックスできる
クロスフェードでつくった波形にさらにノイズをミックス

こんな感じで、LFOだけでも無限の可能性を秘めています。

サンプル&ホールド

さて、LFOとは切っても切り離せない関係にある機能といえば、モジュラーシンセではお馴染みのサンプル&ホールドです。もちろん「SynthMaster」にも装備されています。

「SynthMaster」では、サンプル&ホールドは「Dual」モードで使用できます。

サンプル&ホールドの機能を簡単に説明すると、トリガーされたタイミングで入力信号を「サンプル」し、そのレベルを「ホールド」したまま出力する働きをします。これも見た方が早いですね。

LFOのDualモードではサンプル&ホールドも使える

滑らかな波形でもサンプリングされた時点でのレベルがキープされるため、出力段階では階段状になります。「S-H」パラメーターは、サンプリングするタイミングを調整します。

サンプル&ホールドした波形でオシレーターの「Pitch」をモジュレーションすれば、シーケンサーっぽいループしたフレーズ状になります(ただし出力レベルにスケールクオンタイズ機能はないので、きっちりとした音階で奏でることはできませんが)。

サンプル&ホールドとノイズの活用

で、このモードでもノイズが有効です。

「Dual」モードで、ノイズレベルだけを上げてみましょう。LFO波形は消えて、ノイズの出力のみになります。ディスプレイではこんな感じに見えます。

LFOのDualモードでもノイズをミックスできる

で、このノイズにサンプル&ホールドをかけると、こうなります。

LFOのDualモードでノイズにサンプル&ホールドをかける

ランダムなモジュレーションソースのできあがりです。

この状態でオシレーターの「Pitch」をモジュレーションすれば、キーオンと同時にランダムな音程を奏ではじめます。LFOに「RND」とか「S&H」という名前の機能を持つアナログシンセがありますが、内部的にはこういう仕組みになっているわけですね。

こんな感じで「SynthMaster」は、すごくモジュラーシンセ的な発想でつくられているソフトシンセなのがわかります。


さて、ひととおり「SynthMaster」の機能を解説してきたわけですが、まだまだ説明しきれていない機能やTipsなども多数あります。ほんとに話題の尽きない楽しいシンセサイザーですが、とりあえず今回はこれくらいにしておきましょう。

来年には待望の「3.0」もリリースされる予定ですし、続きはその時に!

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