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FMシンセの音づくり(3)エンベロープで音色に表情をつける

FM音源の使い方

FM音源講座の第3回です。

FM音源ってむずかしいの? いやいや、基本的な仕組みがある程度理解できれば手も足も出ないってことはないんだよ、って感じの軽いスタンスでやってます。

さて、前回はキャリアとモジュレーターの働きについて解説しました。

まだまだ説明が足りないところはありますが、とりあえずモジュレーターの出力でキャリアを変調していけば音色が変化するということがわかればOKです。

FM音源のモジュレーションの概念

ついでに、キャリアとモジュレータのレシオ比の話も思い出しておいてください。
それぞれのレシオを調整することで、鋸波っぽい音や矩形波っぽい音、いかにもFM音源って感じの金属音など、波形レベルでの作り込みが行えるわけです。

しかし、このままでは「ただ音が鳴りっぱなし」の状態です。

そこで、「音」に「表情」をつける「EG(エンベロープジェネレータ)」の登場となるわけですね。

FM音源のおさらい

ちょっとおさらいです。
第1回のときの、ボイスアーキテクチャの図をもう一度見てみましょう。

まずはアナログシンセから。

アナログシンセのボイスストラクチャー

VCFにかかるエンベロープがフィルターのカットオフを制御して、音色に時間的な変化をつけます。そして、VCAにかかるエンベロープがアンプのレベルを制御して、音量に時間的な変化をつけます。

では次に、FM音源の場合を見てみましょう。

FMシンセのボイスストラクチャー

モジュレータにかかるエンベロープは、キャリアに対する変調レベル時間的な変化をつけます。つまり、音色を変化させるわけです。また、キャリアにかかるエンベロープはその出力レベル、つまり音量に変化を変化つけるわけです。

アナログシンセの「VCFにかかるEG」とFM音源の「モジュレータにかかるEG」、そして「VCAにかかるEG」と「キャリアにかかるEG」は、それぞれかなり近い働きをしていることになります。

とりあえず「2オペレーター」の段階では、ふたつのEGの役割は単純に「キャリアEG=音量変化」「モジュレーターEG=音色変化」と考えて問題ありません。

変化の度合いについては実際にいろいろ試してみて、感覚的に慣れていくのが良いでしょう。

エンベロープを設定する

それでは再び「DX7 V」を操作して、エンベロープの設定をおこなってみましょう。

ちなみに「DX7」のエンベロープのパラメータは「L1〜L4」(レベル)と「R1〜R4」(レート)」の8個です。図解するとこんな感じ。アナログシンセのADSR形式に比べて、格段に表現力が高いのがわかります。

DX7のエンベロープ

なお、「R1」が、アナログシンセでのアタック、「L3」がサスティンレベル、「R4」がリリースに相当します。で、「L1」「L2」「R2」「R3」で、ブレイクポイントつきのディケイを構成しています。

アナログシンセの場合、エンベロープの立ち上がりのレベルは「0」ですが、FM音源の場合は「L4」を調整することで、出力レベルが上がった状態からアタックタイムをスタートできます。これはモジュレーター側のEG設定で重宝するパラメータです。

エンベロープの操作

では、実際にさわってみます。

「INIT VOICE」を選んで、音色を初期化してください。アルゴリズムは「5番」です。
それから「OP2」の出力をあげて、鋸波っぽい音にしておきます。

まず、操作画面の上の方にある「ENVELOPES」タブをクリックしてください。

DX7Vのエンベロープ操作画面を表示する

画面が切り替わり、エンベロープの操作パネルになります。
この画面で、マウス操作によるエンベロープパラメータの設定が行えます。

DX7Vのエンベロープ操作画面

では、画面ので囲ったところをマウスでつまんでドラッグして、パラメータを引っ張り出してみましょう。

DX7Vのエンベロープを設定する

操作できるポイントをすべて引き出して配置すると、なんとなく見慣れたエンベロープの形になりますね。ちなみに「S」と書かれたポイントが「L3」、つまり「サスティンレベル」をあらわしています。

なお、現状は「OP1」が選択された状態なので、操作しているのはキャリア側のエンベロープになります。つまり音量の時間的変化を調整しているわけです。

今度は、モジュレータ側のエンベロープを操作してみましょう。オペレーターセクションで「OP2」を選択します。

オペレータ2を選択する

さっきと同じようにパラメータを操作して、エンベロープを調整してみます。

エンベロープを調整する

パラメータが多い割に、簡単操作で設定できますね。しかもキャリア側のエンベロープも重ねて薄く表示されているので、わかりやすいです。

DX7の実機との差

実機の「DX7」だと、パラメータの設定は小さな液晶画面でおこないます。スライダーで操作できるパラメータもひとつずつ。それをちまちまエディットしていくわけです。エンベロープひとつとってもアナログシンセのような感覚的な操作ができないという、これもFM音源をむずかしく感じさせていた一因でしょう。

その点「DX7 V」、ほんとに使いやすいですね。

ちなみに以下は、「DX7 V」の「Pad」系のプリセット「Moving 5th」のエンベロープです。

プリセット「Moving 5th」のエンベロープ

実際に聞いてみてください。めっちゃ動いてますよ。
とくにモジュレーター側のエンベロープがウニウニうねって、音色を動かしています。

6オペ機は、各オペレーターにひとつずつ+ピッチEGで、計7基のエンベロープを持っています。

加えて上記の音色は「DX7 V」で拡張されたエンベロープモード、「MSEG(マルチセグメットEG)」を使ってます。ユーザが複数ポイントのパラメータを設定でき、ループまで組めちゃうという優れものです。そのため実機ではつくれない、豊かな音色変化が得られるんですね。


今回はここまで。
とりあえず、FM音源のポテンシャルは垣間見えたかと思います。が、解説はまだ2オペ。理解はしやすいですが、まだまだアナログシンセと同等レベルです。

それでは次回はオペレーターの数を増やして、音作りの可能性を広げてみようと思います。

(※次回につづく)