Cherry Audio社のブラックフライデーセールのロスタイムがずいぶん長いなぁと思っていたら、いつのまにかホリデーセールに突入してました。フラッグシップの「Voltage Modular Core + Electro Drums」が50%オフのほか、サードパーティー製モジュールのいくつかもセール価格で発売中です。クリスマス明けの12月27日までつづきます。
さて、「Voltage Modularを使ってみよう」の後編です。今回はステップシーケンサーを使ってみます。
その前に、前編はこちら。
$0の「Voltage Modular Nucleus」を使った、モジュラーシンセの入門編になってます。
今回は、上記で組み立てた1VCOシンセサイザーをそのまま使います。
8ステップシーケンサーをつないでみる
「Voltage Modular Nucleus」のセットには、8ステップのシーケンサーモジュールも含まれています。それを前回つくったシンセに接続してみましょう。
では、「Eight-Step Sequencer」をラックにセットします。
これで、あっさり準備完了です。
CVとGATEを接続する
アナログシンセサイザーを鳴らすには、CV信号とGATE信号による制御が必要です。ステップシーケンサーはそれらを生成するジェネレーターになります。
CV信号は「8 STEP SEQUENCER」の「CV OUTPUT」から取り出します。GATE信号は「GATE OUT」からです。それぞれをシンセに結線していきます。
CV/GATEは先にマルチプルモジュールにまとめておいたので、ここを差し替えるだけですみますね。ラベルも貼っておいたし、接続先もまとめられているので簡単です。
鳴らしてみる
それでは鳴らしてみましょう。スライダーを操作して音程をセットします。各ステップのオン/オフは、8個のボタンで設定します。
たいていのアナログシンセは1オクターブを1ボルトの電気信号で制御します(過去のKORG製品だけ、ちょっと特殊だったりします)。ステップシーケンサーのオクターブレンジが「2V」ならスライダーの設定範囲は2オクターブ、「5V」なら5オクターブになります。この電気信号がCV(コントロールボルテージ)です。
スライダーを調整して、ステップのオン/オフも設定したら、スタートボタンを押してみましょう。
あっけないくらい簡単に、シーケンサーつきアナログシンセが出来上がりました。
ホストのDAWと同期する
せっかくなので、ホストのDAWと「Voltage Modular」のシーケンサーのテンポを同期させてみましょう。
Sync信号を取り出す
現実世界でアナログシーケンサーやガジェット系ビートマシンなどをテンポ同期して動かす場合、MIDI接続以外ではSync信号を使用するのが一般的です(信号自体は、一定周期で送られてくるパルス波です)。「Voltage Modular」でも同様に、シーケンサー同士を同期するにはヴァーチャルなSync信号を使います。
ホストのDAWで設定したテンポに同期させるには、「TRANSPORT」セクションからSync信号を取り出します。
ただ、この信号そのままでは、8ステップシーケンサーにはちょっと使えません(テンポ同期用の信号なので解像度が高すぎて問題があります)。そこで出番となるのが、Sync信号をクロックトリガーに分解する「Sync Divider」です。
Sync信号からクロックトリガーを生成する
メニューから「Sync Divider」をラックに加えてください。
次に「TRANSPORT」セクションの「SYNC OUT」を、「SYNC DIVIDER」の「SYNC IN」につなぎます。
さらに「SYNC DIVIDER」の「CLOCK OUT」を、「8 STEP SEQUENCER」の「EXT CLK」に入力します。
[EXT]ボタンもオンにしてください。これで、シーケンサーの進行が「RATE」で設定される内部クロックではなく、「EXT CLK」に入力された外部クロックによってトリガーされるようになります。
クロックトリガーについて
8ステップシーケンサーは、その名の通り8つのステップを持つシーケンサーです。クロックトリガーは、ステップを進めるタイミングを制御する信号になります。タイミングは「SYNC DIVIDER」のスライダーで設定します。
スライダーの位置を「1/8」にすれば、8分音符のタイミングでステップを進行させるトリガー信号が生成されます。シーケンサー側は、8ステップ合計で8分音符8個分(いわゆる1小節分)のシーケンスデータになります。スライダーを「1/16」に設定すれば、各ステップは16分音符になりますね。8ステップ合計で16分音符8個分のデータです。
ちなみにトリガーシーケンサー(※これは別売り)を使えば、プログラムしたゲート信号をクロックトリガーとして使うこともできますよ。
この方法なら、ノートとステップ数だけ先に決めておいて、発音タイミングはリズムといっしょに組み立てることができます。また、ステップ数とトリガーの数をずらせば、ポリリズムなフレーズをつくることもできます。
このように電気信号を「どの様に扱うか」の工夫とモジュールの組み合わせ次第で、いろいろな可能性を試せるのがモジュラーシンセの楽しいところです。
ホストDAWのプレイボタンで制御する
さて、話を戻します。
ステップシーケンサーの仕組み自体はだいたいわかったかと思いますが、実際に鳴らすにはもうひと手間必要になります。シーケンサーのスタート/ストップの制御です。ホスト側のプレイボタンで「Voltage Modular」側のシーケンサーをコントロールできるようにしましょう。
「TRANSPORT」の「PLAY」を「8 STEP SEQUENCER」の「START」に、同じく「STOP」と「STOP」を接続します。
この状態でDAW側のスタートボタンを押して、テンポを調整してみましょう。「Voltage Modular」のシーケンサーが同期して動くはずです。
以上で、DAWでのトラックメイキングにも使える、ちょっとしたモジュラーシステムが完成しました。
エフェクトを加える
これだけでも充分ですが、「Voltage Modular Nucleus」にはエフェクトモジュールも用意されています。せっかくなので、ディレイユニットも使ってみましょう。
「Delay」を2基、ラックに配置します。
「1L(M)」に接続していた出力をはずして、マルチプルモジュールからふたつのディレイの「INPUT」に出力を接続しなおします。
最後に、それぞれのディレイの「OUTPUT」を「MAIN OUTS」の「1L(M)」「1R」に接続すれば、ステレオディレイつきのサウンドになります。
さらにここから、ディレイ出力を他のモジュールで加工してみたり、モジュレーションソースで揺らしてみたりなど、あとはやりたい放題です。パッチングの拡張性と可能性と妄想は、どんどんと広がります。
パフォーマンスプレイ用にコントローラーをアサイン
まだまだ行きます。
「PERFORM」セクションには、9つのボリュームノブと4つのボタンが用意されています。ここには、ラック上の任意のパラメータがアサインできます。アサインしたいノブやボタンの上で右クリックしてください。表示されるメニューから、「PERFORM」セクションの各コントローラーに接続していきます。
「PERFORM」セクションにアサインされたパラメータは、ラベルのテキストを変更することもできます。
また、各コントローラーは、外部接続のフィジカルデバイスからのMIDI CCを受け取ることもできます。
で、ひととおりパラメータをアサインしてラベルをリネームすると、こんな感じになりました。
以上で完成です。なかなか立派なセットになりましたね。
シーケンサーを走らせつつノブをグリグリ動かすと、いい感じでアシッドでアンビエントなサウンドが出てきます。ここまで、$0です!
お買い物が止まらない…
さて、いろいろいじっていると、だんだんと新しいモジュールも欲しくなってきます。このへんはリアルなユーロラックなんかと同じでしょう。
で、「Voltage Modular」のよいところというか悩ましいところというか、「Store」メニューから追加のモジュールが簡単に買えてしまいます。しかも、だいたい$10くらいからあったり、バンドル品だったらもっとお得に購入できたりします。バラエティも豊富で「このユーティリティどうやって使うんだろう?」とか、PSPのようなそこそこ名の通ったソフトハウスのものから個人制作のちょっとしたモジュールまで、ラインナップを眺めているだけでもかなり楽しめます。
また、30日間の無料トライアルつきのモジュールもたくさんあります。「Try」ボタンを押せばダウンロードが始まり、そのまますぐに使えるようになります。気に入ってから購入すればいいので、間違いもありません。
とにかく手軽に始められて、しかも楽しさ爆発のソフトウェアモジュラーシンセが「Voltage Modular」です。追加のモジュールも安いし、とりあえず興味が湧いたら、$0の「Voltage Modulsar Nucleus」を是非ダウンロードしてみてください!